種牛サンシチ/37

2017.09.26
第一巻 湖水地方レポート

種牛、英語ではbull、かつてレイジングブルという映画があって、怒れる野牛と訳していた。ブルというと、猛々しくて危険なイメージだ。

ホルスタイン種の種牛は、大きくていかにも危険だと聞いている。自分の牧場に種牛を置いているのは、標茶で私が最初に教えを請うた山本牧場だ。放牧牛群の中に種牛を混ぜていた。間違いなく必ず種がつく。獣医さんも、精液も必要ない。コストは低く抑えられる。オペレーション上の経験と技術がモノを言う。ほかに種牛を持っている酪農家は知らない。

湖水地方牧場のブラウンスイスは、まだ人工授精のみに頼っている。「まだ」と言うのは、できれば種牛に預けたいからだ。施設を含めて、もう少し充実したら検討したい。

水牛は、種牛に頼っている。人工授精もする。イタリアから精液も取り寄せた。しかし、種が付きにくいから市場に出して・・・という訳にはいかないから、サンシチに期待する。

サンシチは、湖水地方牧場の種牛第2世代だ。最初に買った種牛は、人間に対して攻撃的な行動をとったために、薬殺した。一度、攻撃的になったヤツは、必ず、二度目がある。

 サンシチは、豪州で唯一、地中海イタリア水牛を持っている牧場から、飛行機に乗って、9頭のメスと一緒にやってきた。お行儀が良くて、人間に対してフレンドリーだ。9頭のメスと一緒にいる時よりも、この日本で生まれた、妹分の4頭と一緒にいる時の方が、さらに穏やかで落ち着いている。それで種付けが終わってからも一緒にいるのだが、なにしろ、食い意地が張っている。朝夕、配合飼料をパラパラとやると、4頭の妹分を蹴散らして、全部食べてしまう。困って色々と考えたあげく、写真のように飼槽の前のパイプの高さを変えた。サンシチの弱点は、頭が大きいことだ。サンシチの頭が入らない飼槽に、妹分用の飼料を入れてやる。サンシチは悔しそうに眺めているが、とにかく頭が入らないのだから、独り占めしようがない。うまくいったと思う。 小.jpg

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